フリーランスのとして受注が安定してきたので、副業ではなく独立を考えている方。もしくはすでにフリーランスとして独立をしているけれども、扶養の範囲内で働いている方。これらの方は、フリーランスのライター(フリーライター)の社会保険についても気になることと思います。社会保険料の金額は年収に大きく関わってきますので、正しい情報を確認したうえで、フリーランスとしてどう活動していくのか考えなければなりません。
フリーランスが社会保険に加入するには、自身で社会保険に加入するか、配偶者等の扶養家族として社会保険に加入するかの2つに大別されます。この2つを軸に、それぞれのメリットと注意点について紹介します。
1.社会保険とは
会社勤めにおいて、最も身近なのは社会保険料が天引きされる、健康保険(介護保険)・厚生年金保険でしょう。また、勤務時間中にケガをした場合に給付が受けられる労災保険。育児休業給付や介護休業給付、もしくは失業時に基本手当の支給が受けられる雇用保険も労働者の注目度が高い社会保険でしょう。
この健康保険(介護保険)・厚生年金保険・労災保険・雇用保険保を広義の社会保険と呼びます。しかし基本的に労災保険・雇用保険保は労働者のための保険であり、フリーランスには適用されません。そこでここでは、「狭義の社会保険」と呼ばれる健康保険(介護保険)と厚生年金保険について解説します。
会社員としての社会保険 健康保険(介護保険)と厚生年金
通常会社員であれば、会社を通じて健康保険(以下、介護保険も含む)と厚生年金に加入します。しかし退職してフリーランスになれば、それらからは脱退することになります。まずは会社員の方が加入する厚生年金・健康保険とはどんなものなのか特徴を把握しましょう。
特徴1.諸手続きを会社が代行
加入や脱退の事務手続きは会社が代行してくれます。保険料の納金も、給与から天引きのうえ会社が代行します。フリーランスであれば、自ら手続きしなければなりません。また、払い込み期日や引き落とし口座の残高を管理し、適切に払い込みができるようにする必要があります。
特徴2.保険料を会社と折半して支払う
健康保険と厚生年金はどちらも、保険料の会社負担分があります。しかし、国民健康保険・国民年金は全額自己負担です。
特徴3.健康保険は保障が手厚い傾向
国民健康保険よりも保障が手厚い傾向があります。例えば健康保険には、病気やケガで会社を休んでおり、かつ会社から十分な給与が受けられない場合に支給される給付金として「傷病手当金」があります。これは最長で1年6カ月受給することが可能です。
特徴4.厚生年金は給付額が多くなる傾向
厚生年金も国民年金よりも給付額が多くなることが多いです。厚生年金の給付額は、加入者の支払った保険料と所得に応じて計算されます。長期間(つまり多くの保険料を納金)加入していれば、それに応じて給付額が多くなる可能性が高まるのです。さらに厚生年金保険料は企業負担分があるため、支払った保険料以上の恩恵が受けられるといえます。
フリーランスの社会保険 国民健康保険(介護保険)・国民年金
フリーランスの社会保険の代表格は国民健康保険・国民年金です。これは20歳以上の国民へ向けた公的な社会保険制度であり、まだ働いていない20歳以上の学生や、会社の社会保険に加入しないフリーター(いわゆる非正規雇用者)などが加入します。
国民年金はすべての国民に向けた制度ですので、原則として未加入は許されません。申請すれば保険料が免除される余地はありますが、その場合は将来の年金受給額が減額されてしまうので免除申請はおすすめしません。
フリーランスともなれば社会人時代と比べて収入が減ることや収入が不安定になることもあるでしょう。しかし、国民年金は老後の生活の基盤を整える必要な支出です。また、現役時代に障害を負ってしまった際は障害者年金も受給可能です。老後や障害といったリスクに備えるためにも、しっかりと加入しなければなりません。
独立後に保険料が支払えるか不安な場合は、半年から1年分程度は貯蓄しておくことで、支払いが滞ることがないようにしておきましょう。
フリーランスの注意点 住まいも探しにくい?
社会保険ではありませんが、フリーランスは「住まい」についても注意が必要です。例えばアパートの賃貸契約において、収入が安定していないとみなされて物件探しが難航するケースがあります。また、住宅ローン契約においても審査が厳しくなる傾向があります。住まいは社会保険とは別の要素ですが、大切な生活基盤です。もしも引っ越しや住宅購入を検討している場合は、フリーランスになる前に済ませておくといいかもしれません。
2.国民健康保険・国民年金への加入手続き
フリーランスになって国民年金・国民健康保険への加入する場合、大まかには以下のような手続きが必要です。
国民健康保険の加入手続き
住所のある自治体で手続きを行います。従前の健康保険を脱退した日(退職日)から、原則14日以内に届出をする必要があります。基本は住所地の市区役所または町村役場で行いますが、出張所が設けられていたり、郵送でも届出できたりしますので、お住いの自治体のサイトを確認してみましょう。
国民年金への加入手続き
所住所地の市区役所または町村役場で手続きを行います。こちらも原則14日以内に届出をする必要があります。
なお、それまで世帯主の保険に加入していた方が扶養を抜けてご自身で国民年金に加入する場合は世帯主の会社を通じて「被扶養者(異動)届」を年金事務所に提出します。この手続きは事実発生から「5日以内」ですので、事前に世帯主の会社に連絡をしておきます。また、扶養から抜ける年収基準は後述します。
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構
扶養者と、扶養から抜ける年収基準は
健康保険や厚生年金には扶養家族という概念があります。これは健康保険や厚生年金の加入者に扶養される家族は、原則として保険料不要で社会保険に加入できるという制度です。
共働き夫婦において、一方が会社員で、一方が一定収入以下のフリーランスであるという前提で考えてみます。この場合、フリーランスの収入が要件を満たせば、会社員である配偶者(以下:世帯主)の扶養家族となることが可能です。そうすれば原則として扶養家族の保険料負担はありません。年間の収入基準は全国健康保険協会(協会けんぽ)であれは以下のとおりです。
- 認定対象者(この場合はフリーランス本人)の年間収入が130万円未満
※認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満 - かつ、被保険者(この場合は世帯主)の年間収入の2分の1未満
フリーランスが自身で国民健康保険と国民年金に加入する場合、年間の保険料負担は20万円程度になると考えられます。つまり年収見込みが130万~150万円程度であれば、敢えて収入を抑えて扶養に入るのも選択肢のひとつです。
収入が不安定になりがちな独立初年度は世帯主の扶養に入り、2年目以降は社会保険に入ることを検討してもいいでしょう。自由な働き方ができるのがフリーランスの強みですので、ご自身のライフスタイルやキャリアプランに応じて社会保険や年収目標を選択していくといいでしょう。
3.フリーランスの社会保険 こんな選択肢も
国民健康保険や国民年金に加入する以外にもいくつかの選択肢があります。
1.会社の健康保険を任意継続
健康保険に関しては、会社で加入していた組合の健康保険を2年間はそのまま任意継続することが可能です。国民健康保険は前年の所得額を基に算出されるので、前年の所得が高い方は高額になるケースがあります。その場合は任意継続の方が保険料を抑えられるかもしれません。
任意継続だと会社で加入していた健康保険と同じ内容の給付が続くため、人間ドックの受診補助も継続を利用できるメリットもあります。
ただし、退職日までに2ヵ月以上継続して社会保険に加入している方が対象です。また、退職日から20日以内に手続き行わなければいけないので、退職前に意思決定して準備しておくことが重要です。さらに、保険料は会社員の時は会社の負担分がありましたが、フリーランスになると全額自己負担となります。そこも含めて国民健康保険との比較を行いましょう。
2.国民健康保険組合への加入
国民健康保険組合が運営する国民健康保険もあります。国民健康保険組合とは、所定の同種事業、または特定業務に従事する者が集まって作る組合のことです。代表的なものは、建設業界、弁護士、税理士、歯科医師など各国民健康保険組合です。
ただし、これらの国民健康保険組合は加入要件がありますし、加入時に年会費が必要なケースもあります。検討段階で内容を確認しておきます。
3.小規模企業共済への加入
小規模企業共済とは小規模企業の経営者のための「退職金制度」で、主に小規模企業の経営者や役員が対象です。掛金は毎月1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、退職・廃業時には積み立てた掛金に応じた共済金が受け取れます。
また、掛金の範囲内で低金利の貸付を受けることも可能ですので、資金難に陥った際の対応策としても活用可能です。
4.保障の薄さをカバーしたいなら
国民健康保険や国民年金に加入することになった場合に、保障の手薄さが気になる方も多いでしょう。特にフリーランスは収入が不安定になりがちですので、保障の薄さが生活に大きな影響を与えるかもしれません。そういった場合は、ご自身で保障を手厚くするための工夫が必要です。
iDeCoへの加入
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です。当然、国民年金加入者も掛金を拠出して加入可能です。拠出した掛金を自分で運用し、資産を形成する年金制度で投資リスクはありますが、長期的に運用することでリスクを抑えることが可能です。
また掛金は所得控除が受けられるので節税効果も生じます。毎月の掛金設定は慎重にしなければなりませんが、拠出する余裕があるなら検討してみるといいでしょう。
民間保険のへの加入
病気やケガで働けなくなってしまった場合には医療保険や所得補償保険に加入する方法もあります。保険料がかかるので資金に応じて加入しなければなりませんが、ベストな保険を選べれば大きな安心につながります。
まとめ フリーランスの社会保険は事前の内容把握が重要
フリーランスの社会保険は社会人時代の社会保障と特徴が異なります。フリーランスとして独立を考えるなら、保険料の額や支払方法、保障内容を確認したうえで、手続き面もしっかりと理解しておくことが必要です。また、保障内容が薄いと感じるなら、ご自身で保障をカバーする方策を考えなければなりません。
一方で、収入が安定しないうちは扶養の範囲内で働く方法もあります。
ご自身で希望する働き方を実現するためにも、フリーランスになる際は、社会保険についてしっかりと向き合っていきましょう。